起立性調節障害とは
院長の佃隆は、起立性調節障害についてのガイドラインを作成している一般社団法人日本小児心身医学会の会員、NPO法人起立性調節障害ピアネットAlice正会員です。
起立性調節障害( きりつせいちょうせつしょうがい / OD:Orthostatic Dysregulation)とは、"Ortho"は「正・直」"static"は「静止」 "Dys"は「打消しの意味」"regulation"「調節・調整」なので、まっすぐに静止して立つ調整がうまくできない障害という意味になります。
小児科では、子ども(おおよそ20歳未満)に対して起立性調節障害という診断名が用いられますが、神経内科、循環器内科で成人の患者に対しては、起立不耐症 きりつふたいしょう (OI:Orthostatic Intolerance)という診断名が用いられます。どちらも原因は不明ですが、起立後の血液循環の異常によって、立ち続けることに耐えられない(起立不耐性)という症状が現れる病気の総称で、ほぼ同様の意味で使われています。
以下の症状が、単体、複数出る場合は、起立性調節障害や起立不耐症と診断されます。
・ 立ちくらみ、めまい、 失神
・午前中の体調不良、睡眠の異常
・頭痛
・朝の体調不良
・倦怠感、疲労感
・胃腸の不調
・思考力・記憶力の低下
起立性調節障害(OD)は思春期前後の子どもに多くみられる病気です。
日本学校保険会が2010年に小学生、中学生、高校生を対象に行った調査によると、起立性調節障害(OD)の割合は、男女ともに学年が進むのに従って上昇しています。
この調査では、起立性調節障害(OD)の判定方式は、次の諸症状のうち、
1.「立ちくらみ」や「めまい」を感じることがある。または、立ち上がるときにそっと立つことがある。
2.立っていると気持ちが悪くなり、ひどい時には、倒れることがある。
3.「お風呂やシャワー」に入ったとき、気分が悪くなり、ひどいときには倒れることがある。
4.少し動いただけでも、胸がどきどきしたり、息切れしたりすることがある。
5.朝、頭痛や腹痛、身体のだるさで、起きにくいことがある。
6.午前中、頭痛や腹痛や身体のだるさで、調子が悪いことがある。
7.「顔色が悪い(青白い)」と言われることがある。
8.食欲がないことがある
9.「おなか」が刺すように痛くなることがある。
10.身体の「だるさ」や「疲れやすさ」を感じることがある。
11.頭が痛くなることがある。
12.乗り物に酔いやすい。
(1)1~6(大症状)の中で3つ以上訴えのあった場合
(2)1~6(大症状)の中で2つ、7~12(小症状)の中で1つ以上訴えのあった場合
(3)1~6(大症状)の中で1つ、7~12(小症状)の中で3つ以上訴えのあった場合
のいずれかに該当する場合をODとして判定しています。
ただし、起立性調節障害(OD)の診断を特定する際は、起立試験時の脈拍、収縮期血圧、脈圧、心電図などの所見をを小症状に加えて判定されることが望ましいので、このアンケートだけで確定するわけではないので、ご注意ください。
起立性調節障害(OD)の原因・メカニズム
起立性調節障害(OD)の症状の根本的な原因は、自律神経の不調です。
自律神経には2種類があり、体を休める時に優位になる副交感神経と、活動する時に優位になる交感神経があります。
通常は、夜はリラックスする副交感神経、朝から日中は交感神経が優位になるといったように、生活の色々な場面に合わせて無意識に切り替えが出来ています。
人間の体は心臓が脈を打ち、血液をポンプのように押し出し、全身に血液が行き渡るようになっています。
心臓が血液を押し出す力の強さのことを血圧といいますが、血圧の高い、低いは自律神経によってコントロールされています。
通常は就寝中は血圧は低く、朝起きると覚醒モードになって血圧は上昇します。
しかし、自律神経が働かないと、血圧のコントロールができないので、通常とは異なり、頭部から下半身に血液が降りてきてしまいます。
その結果、頭部に血液が流れにくいため、朝起きづらい、立ちくらみ、吐き気などを起こしてしまうという訳です。
そこで無理やり起きた、起こしたとしても、脳への血流は確保されていませんから、やはり意識は朦朧としたり、食欲がわかなかったりと、全身で様々な不調をきたします。
起立した時に体内で血流を調節する機能に障害がある状態、これが起立性調節障害(OD)です。
自律神経の働きが悪くなると、生活リズムも狂っていきます。起立性調節障害(OD)の子供は朝は全く動けず、昼過ぎにようやくエンジンがかかりはじめ、夜に覚醒のピークを迎えます。
一度こういうリズムが出来上がると、夜は何をやっても眠れません。
朝は起きれないので、当然遅刻や欠席が増えていきます。
そもそも、思春期は成長期とも重なりますから、短期間で一気に身体が成長・変化する時期です。身長が短期間で数センチ伸びることもあるし、女性であれば初潮も迎えます。
この時期は、一般的に自律神経のバランスも崩しやすくなっています。
ただし、他のお子さんは学校に行ったり、部活をしたりしているのに、どうしてうちの子だけが?と思うのはごもっともで、それには他にも原因があると考えるのが自然です。
神経の仕組みを見てみましょう。
脳や脊髄などの中枢神経から分かれて、全身の器官・組織に分布する神経のことを末梢神経と呼びます。
末梢神経は、体性神経と自律神経に分けられます。
体性神経は、運動神経と感覚神経があります。
・運動神経(体性神経):全身の筋肉を動かす機能
・感覚神経(体性神経):痛み、冷感、触れた感触など、皮膚の感覚や振動、関節の位置などを感じる機能
自律神経は、血圧・体温の調節や心臓・腸など内臓の働きを調整する機能があり、交感神経と副交感神経に分けられます。
交感神経(朝から日中は優位、体を活発に動かす時に働く。)
副交感神経(夜に優位、体を休める時に働く。)
自律神経も、運動神経も、感覚神経も役割は違うものの、同じ神経です。
物理的に神経の流れが悪くなることで、神経全般の機能が下がります。
そのため、自律神経が乱れる原因として、日ごろの姿勢や所作、怪我の経験、出産時の外傷などが原因として考えられます。
出産時に、へその緒が巻き付いていた、吸引分娩や鉗子分娩を行っていた場合は、多くの割合で頚椎の関節がずれたまま成長しています。
通常分娩であっても、8割の赤ちゃんに何らかのゆがみがあるものです。
一般に、5歳までに2,000回転倒しており、その内の1割は重篤な関節の歪み(ゆがみ)をつくる転倒、転び方をしています。
交通事故やスポーツの怪我なども、関節にずれをもたらします。
関節がずれると、神経の流れも悪くなりますので、感覚神経、運動神経と共に、自律神経にもダメージを与える結果となります。
大人であれば、腰痛や肩こりといった症状として出やすいのですが、子供の場合は関節が柔らかく、代謝も高いのと、それが普通と認識していて、体に症状が出ていても認知できていないことが多いです。
成長期の中でも、成長スパートと呼ばれる時期があり、身長が一気に伸びます。女子は10才~12才の頃で約8㎝、男子は12才~14才で約10~12㎝伸びます。この時期は、第2次性徴の時期でもあり、ホルモンの分泌量も高く、体が大きく変化する時期です。こうした体の変化そのものがストレスにもなります。
起立性調節障害(OD)の対策
起立性調節障害(OD)の対策としては、生活リズムを整え、自律神経が働きやすい状態にしていくことです。
一般的な対策としては、1つ目に、朝は起きれなくても決まった時間に強い光を浴びることが大事です。日光が望ましいですが、人工の光でも効果があります。
2つ目に、水分を多めに取ることで身体の老廃物を流したり、エネルギー循環を促進します。
3つ目に、日中はできる範囲でではありますが、運動をし、体温を高め、血流をよくすることです。
4つ目に、夜眠る前は照明をだんだん暗くしたり、テレビやスマホなどの目や脳への刺激を減らすしたりなどの工夫が大事です。寝るときは真っ暗にするか、赤色灯(オレンジの光)にし、明るい白色灯は避けましょう。そして、朝、できる限り決まった時間に朝日、または人工の光でもよいので、光を浴びます。
5つ目に、姿勢をよくし、骨格を矯正することです。姿勢をよくすることで、神経の流れがよくなるので、交感神経や副交感神経の切替がスムーズになります。
これらの対策を行い、自律神経の働きが整ってくると、生活リズムや睡眠リズムも整いやすくなります。
自律神経を整えるには、背骨の骨格矯正ケア、姿勢指導、睡眠指導、栄養指導、運動指導が重要です。
先にも述べたように、起立性調節障害(OD)の原因は自律神経の不調であり、更に言えば関節がずれていることで物理的に神経の流れが悪くなっていることが問題です。
ただ、ひとたび起立性調節障害(OD)の症状が進行すると、関節のずれを取り除くだけでなく、不安にも向き合いつつ、やるべきことを積み上げていくことが必要なので、ナビゲートをしてくれる存在が助けになります。
一つの施設でカイロプラクティックにより背骨を矯正し、体系だった姿勢指導を受け、睡眠指導、栄養指導、運動指導までしてくれることが望ましいです。
また、起立性調節障害(OD)の症状が思春期に多いということから、子どもの心に向き合うと共に、親御さんの心のケアもできるような施設が望ましいです。
一般に姿勢をよくしようとしても、関節にズレがあれば、よい姿勢を保ちづらいものです。
姿勢をよくするためには、カイロプラクティックにより関節の動きの悪くなっている箇所を矯正しつつ、正しい姿勢について学び、実践することが必要です。
ですので、カイロプラクティックや整体などの治療だけではなく、姿勢指導も体系的に行う施設を選ぶ必要があります。
そして、運動指導においても、段階的に強度を高めていく必要があるので、精神論で励ますだけでなく、物理的に運動量を調整しながら進めていく必要があります。
睡眠指導や、栄養指導も状況に合わせた指導が大切です。ただやるべき事、改善すべき事を伝えられても、正しく理解し、実践し、経過を観察していかなければ、そもそも続きません。
カイロプラクティックにしても、姿勢指導にしても、運動指導にしても、それぞれの専門家がいる施設で全てのケアを段階的に行うことが望ましいです。
ケアの方法として、一つ言えることは、人間には現状維持メカニズムといって、今の状態を保とうとする仕組みがあります。
良い悪いではなく、習慣の動物です。体に悪いと思っていても、なかなか辞められないものがあるというのは、子供だけでなく、大人の喫煙や過度の飲酒などでも見受けられます。
大人でも難しいことを、子供にこうしなさい!と言うだけで伝わるというのは無茶な話です。
何か悪いことをいきなり辞めさせるというよりは、何か良いこと、習慣をプラスしていくという発想の方が改善の糸口を見つけやすいです。
お子様ご本人が、これだったらやってみたいとか、これはどうしても辞められない、という思いを聞きながら、生活習慣の改善を進めていく必要があります。
ですので、極力1か所の施設で、包括的にケアできる施設に通院することが望ましいです。
どこに問題があるかを探すのは、パズルでいうと、ジグソーパズル型というよりもルービックキューブ型になります。
ジグソーパズルであれば、時間をかけて一つずつ当てはまるところをはめていけばいつかは完成しますが、この方法はルービックキューブには当てはまりません。
6面の色を綺麗にそろえるには、それなりの手順があります。お子様に最適なケアを、最適なタイミングで提供することが、その子らしい成長、発達につながると考えております。
くれぐれも、検査、カウンセリングを行う、科学的な手法で反復性のあるような治療院や病院を選ぶことをお勧めします。
YouTube健康教室「自律神経失調症の整え方」
当院では、これまでに600回以上健康教室を開催してきております。2020年3月以降、YouTubeにて配信しております。起立性調節障害(OD)は、自律神経失調症の1つです。自律神経失調症についてと、心地よい睡眠を取るための動画を公開しておりますので、こちらを参照ください。
YouTube健康教室「心地よい睡眠を取るための5つの秘訣」
施術の流れ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
頚椎椎間板ヘルニアを根本改善したいというあなたのお役に立てましたら幸いです。
詳細は、「施術の流れ」のページをご覧ください。
ファミリーカイロプラクティック三鷹院
院長:佃 隆 副院長:佃 美香